コスモイン
有機園の物語り

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坂の上の民宿

〜コスモイン有機園〜

小豆島の土庄町、長浜の海を見下ろす高台に来ていた。

山と畑と漁港しかない寒村で、旅人たちを

迎える場所があるという。

 

晴天の中、両脇を草木が覆う緩やかな

坂道を歩いて行くと、 山小屋らしき建家が

静かに佇んでいた。

 

「COSMO HOUSE有機園」

 

かろうじて読める木の看板には、かすかに

「民宿」という文字も見て取れる。

 

「ごめんください」と声をかけてみると、

小屋の中から女性が出てきた。

 

のどかな村の風景によく似合う、

太陽のような笑顔をしていた。

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数えきれない種類の野菜

〜今川さん自慢の畑〜

快く迎えてくれたのは、今川早苗さん。

畑仕事をしつつ、夫である今川二郎さんと

共に民宿を営んでいる。

 

あいさつもそこそこに、小屋の裏手に

ある畑を案内してくれることになった。

畑へ続く道の途中にも、小洒落た洋風の

ロッジらしき建物が見えた。

 

生い茂る草をかき分け、今川さんの後ろをついて歩くと、

そこには立派な畑が広がっていた。

 

畑にいるのが好きでたまらないのか、

今川さんは嬉しそうに解説しながら

農作物の間を進んで行く。

 

「このピーマンはね」

「これはアフリカのオクラでね」

 

トマト、なす、玉ねぎ、人参、ラディッシュ、

八朔、サトウキビまで、 次から次へと、

出てくる出てくる。

 

この畑、八百屋も顔負けの品揃えである。

たくさんの“いのち”が集い、輝き、喜ぶ。

畑はまるで、宝石箱のようだった。

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二人三脚で荒れ地を開墾

〜難しい有機畑に挑む〜

「25年前までは、荒れ放題の土地やったね」

 

毎シーズン、たくさんの野菜が収穫できる彼女の

畑だが、これは手つかずだった土地をいちから開墾し、

耕したものである。

 

当初は、害虫はもちろんのこと、無数の木の

根っこが埋まっており、二人は相当な苦労を

強いられたという。

 

 

やっとの思いで完成させた畑で、

二人が目指したのは完全な有機栽培。

 

しかし、20年以上も前の日本では、農薬を使わずに

野菜を育てるなど、まだまだ一般的ではなかった。

 

何しろ有機栽培は、手間と時間が恐ろしくかかる。

だが、それを乗り越えるからこそ、おいしい野菜が

できるのも事実。

 

おいしくて安全な野菜を作りたい――。

何度も失敗を繰り返した末、二人の思いは

豊かな実りとなって報われた。

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よし子とじゅん子は白いヤギ

〜お乳に肥料に大活躍〜

よく耕された、ふかふかの土を踏みしめて歩いていると、

鳥のさえずりに混じって「メエェ、メエェ」と元気な

声が聞こえてくる。

 

この有機園で飼われている二匹の白ヤギである。

近づいてみると、干し草と肥料の匂いが鼻をついた。

繋がれた紐をピンと張り、ヤギは人懐っこそうに

こちらへ首を伸ばしてくる。

 

「彼女らには助けられてますね。

彼女らのおかげか、サルが寄ってこんのです」

 

畑で使われる肥料の一部は、ヤギの糞尿を元に作られる。

それだけではない、彼女たちの出す乳はチーズとなって、

訪れる人たちを喜ばせているという。

 

呑気に鳴いているだけではない、

二匹はれっきとした働き者なのだ。

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収穫のその先まで

〜手製の小麦粉〜

畑をぐるりとまわって小屋まで戻って来ると、

今度は後方の納屋から「ゴロ…ゴロ…」と

音が聞こえてきた。

 

二人の宿泊客が、石臼で小麦を挽いて

粉にしているところだった。

 

丁寧に丁寧に挽かれるその小麦も、

もちろんここで育ったもの。

市販の小麦粉にはない、いい香りがする。

 

実は、有機園に滞在する間、農作業を率先して

手伝ったり、 今川さんのもと農業体験を

希望する人は多いという。

 

今、臼を回している女性二人も、すでに2週間

近く滞在していて、 毎日畑仕事に汗しているという。

 

「小麦や大麦も、こうして手を加えて小麦粉や麦味噌に

しています。 作物を採って終わり、ではないんです」

 

と、今川さん。重い石臼を何度も回し、採れたて

の小麦を粉にしていく。決して楽な作業ではない。

とても地道で根気のいる仕事。

 

それでも今川さんと他の二人は晴れ晴れとしている。

 

「こんな手間のかかることばかりして生きてます。

それをみんなに食べてもらって、私は余ったものを頂いてます」

 

いのちの恵みに感謝し、自然の中で

生きることを楽しんでいる顔だ。

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異国が繋がる場所

〜土は国境を越える〜

そんな今川さんが大切そうに

見せてくれたアルバムがある。

 

そこには大空の下、畑の中で楽しそうに

笑う彼女と、様々な人種の若者たちの姿があった。

 

「海外から小豆島を訪れた人が、わざわざ

ここに来てくれるんです。 楽しい楽しいって

畑仕事をしてくれる姿を見ると、嬉しくなりますね」

 

数年前、夫が病から畑仕事をすることが

できなくなってしまった。この広い畑と民宿を

一人で切り盛りするのは難しい。彼女を救ってくれたのが、

WWOOF(ウーフ)という支援システムだった。

 

WWOOF制度とは、人手不足に悩む農家や工房、

コスモイン有機園のような農家民宿などがホスト

(受け入れ側)となり、 食事と宿泊場所を与える

代わりにウーファー(手伝う側)に労働力を提供

してもらうというもの。

 

両者の間に金銭のやり取りは

発生しないルールになっている。

 

「日本語か英語のどちらかを話せれば、

1週間以上から受け入れ、農作業を手伝って

もらう代わりに 食事と寝る場所を提供しています」

 

現在、彼女のもとを訪れるのは、国内外から

合わせて月に50人以上、その半数以上が海外からの

ウーファーなのだという。

 

「こうした人たちにとって、うちの畑は

異文化交流の場にもなっているんです。

嬉しいことですよね」

 

観光客とウーファーが一緒になって、収穫した

野菜で料理を作り、パーティーを開くこともある。

 

楽器の得意な人のまわりに誰ともなく集まって、

気がつけばちょっとした演奏会が始まっていたりもする。

 

はじめましての人も、話す言葉が違っても、

同じ土に触れて汗を流せば一気に距離が縮まってしまう。

 

小豆島の小さな村では、農作業や作物を通して

ワールドワイドなコミュニティが築かれていたのだ。

 

コスモイン有機園で得たかけがえのない経験と

思い出は、必ず再び、彼らをここへ向かわせるという。

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島育ちだから教えられること

〜野菜の生え方、知っている?〜

今川さんのもとには、多くの子ども連れも訪れる。

都会暮らしでは味わえない自然とのふれあいを

子どもにも経験させたい、と家族でやって

来るのだそうだ。

 

畑仕事という「非日常」に、子どもたちは目を輝かせる。

 

「最近の子は人参がどう生えているかも知らないんです。

でもここへ来れば、そんな子たちもすぐに慣れて、 楽し

そうに畑仕事を手伝ってくれますよ。 嫌いだった野菜も、

ここでなら食べられると言ってくれるのが喜びです」

 

生まれ育った小豆島は、今川さんにとって

夢のような場所だという。

 

「魅力は自然です。山も海も町も風も魚も、みんな

美しくて穏やかで。 こんな場所だからこそ、子供たちには

私の知りうる限りの体験をさせてあげたい」

 

彼女の畑が育むのは、

どうやら野菜たちだけではないようだ。

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「いのち」を頂いて生きている

〜“宝石箱”で見つけたたいせつなもの〜

彼女の畑は、まるでいのちの宝石箱だ。

たくさんのおいしい野菜が実る。

 

子どもも大人も、国籍も関係なく集い、笑顔になる。

 

「何をどう食べるかというのは、とても大切なことです」

 

私たちが食べている野菜はこうしてできているんだよ、

土に触れて体を動かすのはこんなに気持ちのいいことなんだよ。

 

「我々は確かにいのちを頂いて生きています。

たまにでも、そのことを感じて確認するだけで、

もっと多くの方の心が豊かになるんじゃないかな」

 

コスモイン有機園は教えてくれる。

食べることの素晴らしさ、ありがたさ。

そして、食を通じて人と人、人と自然が交わる楽しさを。

 

暖かくなったら、おいしい野菜を食べに、

彼女の畑を訪ねてみようかな。

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Profileコスモイン有機園

小豆島は土庄町、長浜にある農家民宿。畑で育てる農作物は、すべて有機栽培にこだわっていて、希望すれば宿泊客は農作業に参加することができる。バックパッカーに最適の素泊まりプラン、1泊2食付きプランほかを用意。山と海、そして畑に囲まれた究極の田舎暮らしが体験できる宿として人気を誇っている。WWOOF会員としてウーファーの受け入れも行う。

 

香川県小豆郡土庄町長浜甲1446-1

TEL / FAX 0879-62-4221

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